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[Vol.088 2024年10月号]
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私事ですが先日、人間ドックに行って尿検査したところ、“尿タンパク陰性(-)”との判定でした。毎年同じ結果なのですが、ひとまずは、よかった☻… それはそれとして、これからインジェクションしようとする分析サンプルからタンパクなんか出てきたら、結構、ヤバイことになると予想されます、ので、この実証実験にチャレンジしました。薬物動態研究など生体試料のキラル分析に関わっておられる、そんな皆さまに関心を持って頂ければ、嬉しい限りです(キラルカラムくんにとっては災難ですが…)。
つまり血漿サンプルの除タンパク処理 を怠けて手を抜いてしまうと、こんなんになっちゃいますよ、というお話しです。

まずコスモ・バイオ社様から市販・血漿サンプル、正常プール血漿 (5mL、カタログ価格:1万2千円)を購入しました。
またタンパク除去操作については、ナカライテスク様のホームページ記載の“タンパク質変性沈殿法”を参考にさせて頂きました。

【実験操作】

  • 1. 2mL容のエッペンチューブに500μLの血漿サンプルを量り取った後、1mLのアセトニトリルを加えた。
  • 2. ボルテックスミキサーで約15秒間、振とうし、その後、氷浴中に15分間静置した。
  • 3. 遠心分離(1,700×g)後の上澄み液を、エッペンドルフピペットを用いて丁寧に吸い取り、上清を得た。

今回試験に使ったカラムと分析サンプルは“CHIRALPAK® IH” (0.46 cm I.D. x 15 cmL)とワルファリン(構造は下に記載)です。どんなチャレンジをしたか、を簡単に説明しますと、まず上記操作でタンパク除去を行った“除タンパク血漿サンプル”中にワルファリンを溶解させ、150回の連続インジェクション(分析条件も下に記載)を行いました。このときには専用ガードカートリッジは装着せず、またラインフィルターがついていないHPLC装置環境でした。次に、“怠けものが除タンパク処理の手を抜いた”という想定で、上記の“除タンパク血漿サンプル”“処理をしていない血漿サンプル”を90/10(v/v)の比率で混合し、同じく、ワルファリンを溶解させ同様の条件下、146回の連続インジェクションを行いました。
なお146回という中途半端な回数は、147回目のインジェクション時に、不幸にしてサンプル中の不溶解沈殿物によりサンプルループが目詰まりを起こしたため、このような回数となってしまいました。

ワルファリン構造式
【分析条件】
カラム
CHIRALPAK® IH (0.46cmI.D. x 15cmL)
移動相
ギ酸酢溶液(pH2.0) / アセトニトリル=50/50(v/v)
流速
1.0mL/min.
温度
25℃
検出
270nm (UV)
注入量
10μL( ワルファリン, 100mg/L)

※2種の注入サンプルは、除タンパク処理あり、および、除タンパク処理あり/処理なし=90/10(v/v)のそれぞれにワルファリンを溶解して調製した。

早速、試験前と150回連続打ち込み試験後のクロマトグラムとクロマトパラメーター[保持時間(t)、分離係数(α)、分離度(R)、理論段数(N)、ピーク対称性(Ps)およびカラム圧力(Press. Drop)]を右側にお示しします。

t1、R、N1、Ps1およびPress. Dropの推移のグラフもお示しします。各グラフの横軸は打ち込み回数を示しています。

カラム圧は全く変わっていませんね。また分離係数α、ピーク対称性Ps1は、ほぼ変わっていませんが、保持時間t1が140回打ち込みを少し過ぎた頃でごく僅か長くなり、分離度、理論段数もやはり僅かながら高くなりました。この理由は今のところ明瞭にはわかっていませんが、長時間にわたる連続分析中に移動相瓶からごく少量のアセトニトリルが蒸発したことが理由の一つかもしれません。しかし本結果からはしっかりと除タンパクされていたら、カラムパフォ-マンスには悪い影響を及ぼさないことがこれでわかりました。

次に冒頭で書いたように、“除タンパク処理の手を抜いた” の仮想実験として、“除タンパク血漿サンプル”“処理をしていない血漿サンプル”を90/10(v/v)で混合した分析サンプルの連続打ち込みを行いました。

同様に、t1、R、N1、Ps1およびPress. Dropの推移のグラフもお示ししました。

結構、興味深い結果が得られましたね。分離係数αは、ほぼ影響がありませんでした。保持時間t1は最初に僅かに短くなり、その後は安定していましたが、やはり140回過ぎた頃、ごくごく僅かに長くなりました。しかし理論段数Nは2割減、カラム圧力Press.は1.5倍増、のように一部のパラメーターに、はっきりと悪影響が見られました。処理なし血漿サンプル10%混ぜただけでも、やはりカラムはダメージを受けることがわかりました。ちなみに、このカラムに対して通液方向を逆にして一晩、移動相を流してみましたが、カラム圧は上がったままで元には戻りませんでした。
という訳で、尿中にタンパクがおりてはいけないと同じく、HPLC分析サンプル中にもタンパクが混入してはいけないことがこれではっきりしましたね。皆さま、くれぐれもご健康に留意ください。

★まとめ

予想通り、生体試料をインジェクションする場合、除タンパク処理の手を抜いたりすると、明らかにカラムに悪影響を与えることが実証されました。「そんなこと、言われなくても分かっている」 ではあるのですが、やっぱ実際にやってみると、少しですが興味深いこと(分離係数には影響しないなど)も、わかるものですね。 と、いう訳で、生体試料分析の際にカラムの寿命を長持ちさせるためには、さぼらないでしっかりと除タンパク処理を行ってくださいね。
さて久方ぶりの「良いマネ」の復活です、皆さま、ご無沙汰していました。実は先日、これまで記載した「良いマネ全7話」が収録された冊子体を作成し、展示会の当社ブースに置いてみたら、あっという間に皆さま、お持ちになられて欠品になるほど好評でした。有難うございました、引き続き、さらにパワーアップした「良い子はマネしないで」シリーズをお届けしたいと思いますので、乞うご期待くださいませ。

ファーマテックBU ライフサイエンス研究開発センター 所長 大西(あ)
協力:同・研究開発センター 元田
協力:ヘルスケアSBU 事業推進室 研究開発Gr. 林

2024年度キャンペーンのご案内
(ライフサイエンス製品営業部 魚﨑)

猛暑だった夏も終わり、遂に秋の訪れを感じる季節となりましたね。この秋の訪れと共に、キラルカラムのキャンペーンが11月からスタートします!
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CHIRALPAK® IA~IN, AD-H, AS-H, AY-H, AZ-H
CHIRALCEL® OD-H, OJ-H, OZ-H, OX-H

【SFC用セミ分取カラム】
CHIRALPAK® IA/SFC~IN/SFC, AD-H/SFC, AS-H/SFC, AY-H/SFC, AZ-H/SFC
CHIRALCEL® OD-H/SFC, OJ-H/SFC, OZ-H/SFC, OX-H/SFC
粒子径 5µm
内径・長さ 10mm×250mm, 20mm×250mm, 30mm×250mm

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第35回クロマトグラフィー科学会議
(SCS35)が
開催されます。

11月6日から8日まで、長野県諏訪市「すわっチャオ」においてクロマトグラフィー科学会主催の題記学会が開催されます(実行委員長:植田郁生先生・山梨大学)。本学会ではクロマトグラフィーに関連する新技術やその応用、実用的な分析技術について議論、理解を深めるには、非常に有益な学会です。ダイセルもオリゴ核酸分野へのキラルカラムの適用”という演題でポスター発表を行います。オリゴ核酸を分析対象としてキラルカラムを適用したという、いかにも当社ならではの結果です。秋の信州諏訪(諏訪湖や霧ヶ峰、高島城や諏訪大社)にてお会いできれば幸甚です。

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