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[Vol.078 2023年12月号]
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「多糖系キラルカラムをカラカラにしちゃった、しくしく… でも大丈夫なんです」

「多糖系キラルカラムをカラカラにしちゃった、しくしく… でも大丈夫なんです」

久方ぶりの「良いマネ」の復帰です。皆さま、ご無沙汰していました。“冷やしカラム”はついこの間と思っていたのに季節は冬になってしまいましたね。さて今回も、ペンネーム“わるだくみ”さまからの“キラルカラムを乾かしてしまいました、大丈夫でしょうか?”というお問合せに対しての回答をご用意いたしました… ズバリ、言ってもいいでしょうか?“大抵の場合、大丈夫です。”
順相(ヘキサン)系の移動相条件で多用する多糖系キラルカラムって、ちょっと油断すると乾かしてしまうことってありますよね。移動相瓶が空っぽになったり、封止栓を閉め忘れたりで有機溶剤がとんでしまって、とか……。

今回「良いマネ」は、そんなカラカラになった“多糖系キラルカラム”って生きてますか?というお話しです。同じキラルカラムでも“タンパク質”を分離剤とした“CHIRALPAK® AGP”などの”タンパク系キラルカラム”とは全然違うので、
今号の内容は多糖系に限定、としてご注意ください。

試験に使ったカラムは“CHIRALPAK® ID-3” (0.46 cm I.D. x 25 cmL)です。まず試験前のクロマトグラムとクロマトパラメーター[溶出時間(t)、分離度(R)、理論段数(N)、ピーク対称性(Ps)、およびカラム圧力(Press. Drop)]を右下にお示しします。なんと、このID-3くん、その後、封止栓をはぎ取られ、真空乾燥機に入れられ、60℃×5時間の加熱・真空乾燥地獄を味わったのです、怖っ。

さて、5時間の苦しみの後、ID-3くんは、どうなったのか?体重が2.05g減ってしまいました。この数字はカラム内の封止溶剤重量とほぼ同量なので、おそらく完全に乾いた“からっから”になったのだと思います、ううう…可哀そうなID-3くん

では真面目に性能がどうなったのか、みてみました。下記【HPLC条件】と同じ移動相、流速、温度で10分間のコンディショニング実施し、分析した結果が、右のクロマトグラムとパラメーターです。理論段数、ピーク対称性はほぼ変わっていませんね。保持時間が僅かに(2%)短くなりましたが、これが乾燥のためなのか、分析条件での振れなのか? 気になるところですが、分析条件の振れの可能性が高いです、というのも、“CHIRALPAK® AD-3”同じことを行いましたが、その時には逆に保持時間が2%長くなった、という結果があるからです(後述)。

【HPLC条件】
 移動相:n-Hex/IPA = 90/10 <v/v>
 流速:1.0 mL/min.
 検出:UV254 nm 温度:25℃
 評価サンプル:trans-Stilbene Oxide(TSO)
 打込み: 1.0 mg/mL(移動相) x 5μL
 コンディショニング:10分

この結果を見る限り、「封止栓を閉め忘れた」とか「移動瓶を空にしちゃった」程度の乾燥程度では多糖系キラルカラムはお亡くなりにならないようです。

では最後に、乾かしたカラムを元に戻すときの注意事項をお伝えいたします。
乾いたカラムを垂直に立てて下から上に向けて、カラム通液方向に移動相(例えば、n-Hex/IPA = 90/10)を流速、0.2-0.3mL/min.(内径0.46mmの場合)で、40分以上、できれば120分程度通液してください。このときのカラム出口は、UV検出器等に接続しない方が良いです。気泡が検出器のセルに入ると追い出すのが面倒だからです。今回のチャレンジでは、流速:1.0mL/min. 通液時間:10分で行い、実際に気泡がプクプク出ている写真を下に貼り付けました。

最後に、同様の試験を“CHIRALPAK® AD-3”(0.46cm I.D. x 15cmL)で行った結果(クロマトグラム、パラメーター)をお示ししました。

【HPLC条件】
 移動相:n-Hex/IPA = 90/10 <v/v>
 流速:1.0 mL/min.、検出:UV230 nm
 温度:25℃
 評価サンプル:trans-Stilbene Oxide(TSO)
 打込み: 0.2 mg/mL(移動相) x 2μL、
 コンディショニング:10分

★まとめ

ペンネーム“わるだくみ”さまから頂いた“キラルカラムって乾かしても壊れないの?”を多糖系キラルカラムで試しました。真空乾燥機中、“60℃ x 5時間 in vacuo”地獄でも特に劣化の兆候は見られませんでしたので “封止栓を閉め忘れた” とか “移動相を枯らしてしまった” 程度では、多糖系キラルカラムは大丈夫なようです。しかし多糖系以外のキラルセレクター、特にタンパク質などを使用しているカラムは、乾燥で変性する可能性が非常に高いので、くれぐれもご注意くださいね。なお毎回重要なことをご提示頂ける “わるだくみ” さまを今後は“良案(法師)”さま、とお呼びしたい気持ちで一杯です、有難うございました。

ファーマテックBU 
ライフサイエンス研究開発センター 
所長 大西(あ)
協力:同・研究開発センター 元田

CPHI in Barcelona
(ライフサイエンスSBU 山本(英))

CPHI(Convention on Pharmaceutical Ingredients)は世界8か国・地域で毎年開催されている国際医薬品開発展で、日本でも3~4月に東京で開催されていますので参加されたことがある方も多いのではないかと思います。名称通り元々は医薬品原料にフォーカスした展示会だったのですが、今ではそれだけでなくアウトソーシング、機器・装置、バイオ医薬品、DDS、パッケージングと多岐に亘っています。10月~11月に欧州で開催されるものが「本家」で(ゆえにCPHI Worldwideとも言われる)、今年はスペインのバルセロナで10月24日~26日に世界中から約6万人の業界関係者が集まって開催され、当社はインド子会社と共同で「Daicel Life Sciences」の名前で出展しました。

皆さん、バルセロナと聞くと何を連想されますか?サグラダファミリア、FCバルセロナ、美味なるスペイン料理、フラメンコ鑑賞、闘牛見物、などなど観光イメージですよね!はい、魅力的な街で誘惑に負けないよう頑張ってマインドコントロールしました(何のことやら)。それでも話のネタにと隙間時間に名所を訪ねてみたところ、そこだけではなく多くの名所は事前予約が必要になっているそうで、門前払いとなり敢え無く退散しました。オーバーツーリズム対策ってやつでしょうか、これも古き良き時代はとうに過ぎ去った一例ですかね。

閑話休題。展示会は盛会で、コロナ前の活況を取り戻していました。当社は今回はインド子会社のサービス事業の展示をメインに据え、写真をご覧の通りブース内にインド人のスタッフが多かったものですから、訪れた人の中には「ダイセルはインドの会社かと思った」という感想を述べられる方もいらしたくらいでした。当社ライフサイエンス事業のグローバル化が進んでいる証と解釈すれば、それはそれでポジティブに受け止められます。
全体的に一つ寂しく感じたことは、日本からの出展社や来場者が減ってしまったことです。昔は(筆者がCPHIに初参加したのは1996年でした。トシがバレましたね)、会期直前に製薬会社のお客さんや同業者に会うと「CPHIには行きますか?」が合言葉のように交わされていたのを覚えています。この業界現象をどう解釈すべきか、もし同じように感じられている方がいらしたら一杯やりながら語らいたいですね!
来年は10月にイタリアのミラノで開催とのことです。ミラノと聞くと何を連想されますか?

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