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ユーザーインタビュー
User Interview
計算科学と情報科学から
不斉触媒反応の改善を目指して!
計算科学による合理的な反応証明に
ダイセルキラルカラムを日常的に使用
北海道大学
化学反応創成研究拠点 (WPI-ICReDD)
美多 剛 先生
先生のご研究について、教えてください。
2019年より北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI ICReDD)で遷移金属触媒、有機分子触媒、光電子移動触媒を用いた新反応の開発を行っています。
計算科学と情報科学から不斉触媒反応の改善を目指して!
これらに加え最近では、電気化学を用いた新反応開発も始めています。ICReDDでは計算科学主導による理論に裏打ちされた合理的な新反応開発がミッションのひとつであり、
計算科学により導き出されたどんな反応にも対応できるように、様々な試薬や合成装置が備わっています。ICReDDには計算、情報、実験の三領域の研究グループがありますが、
我々の実験グループでは「いかにしてコンピュータから新反応開発に繋がる決定的な要素を引き出すか」に焦点を置き、特に計算科学者と協力しながら新反応開発を推し進めています。
研究テーマのひとつに、不斉収率の上がりきっていない不斉触媒反応を、計算科学と情報科学を用いて改善するプロジェクトがあり、不斉収率の測定にダイセルのキラルカラムを日常的に使っています。
「ご研究にキラルカラムを使用する
ようになったきっかけ」について
教えてください。
有機合成化学の研究室に学部4年度に配属され、その後博士号を取得し、米国で博士研究員として過ごすまでの8年間は一貫して新規不斉触媒の開発とその応用研究に従事してきました。 つまり私は、研究室に配属された翌日からダイセルのキラルカラムで不斉収率の測定を行ってきたため、ダイセルと共に成長させて頂いたといっても過言ではありません。 博士研究員先のハーバード大学のEric N. Jacobsen研で使用しているキラルカラムもダイセル製であったことに驚かされたとともに、日本の技術が世界の研究室を席巻していると感じました。 2009年に帰国して、北海道大学大学院薬学研究院に助教として赴任し、2019年にICReDDに異動する10年の間にも、数年に一度はエナンチオ選択的な反応の開発に携わっており、ダイセルのキラルカラムには大変お世話になっていました。
ダイセルキラルカラムの利点について教えてください。
ICReDDに赴任する前に在籍したいずれの研究室(計4研究室)にも、CHIRALPAK® AD-H, AS-H, CHIRALCEL® OD-H, OJ-Hの4本のキラルカラムが常時備わっていました。キラルカラムの種類が多くかつその中でも特にAD-HとOD-Hを使用することで 両エナンチオマーが綺麗に分離できた経験から、ダイセルキラルカラムに対する印象は良いです。基本的には定量分析ではなく定性分析なので、両ピークが重なることなく綺麗に分離してくれれば問題はありません。 ダイセルのキラルカラムしか使用経験がないことから他の選択肢を知りませんでしたが、最近ほかの会社が同じようなタイプのキラルカラムでより安価なプロモーションをかけてきており、そちらに心が揺らぐこともあります。 おそらく他社も同じような技術を採用しているため分離に問題はないのかも知れませんが、今までダイセルのキラルカラムしか使用したことがないのでその情を捨てがたいです(笑)。現在 ICReDD では耐溶剤型の CHIRALPAK® IA, IB N-5, IC, IHの4本のダイセルのキラルカラムを使用しており、そのいずれかを使えば分離できています。
キラルカラムを使用することにより、ご研究に活かされた点など
ございますでしょうか?
4本の耐溶剤型のキラルカラムCHIRALPAK® IA, IB N-5, IC, IHとフォトダイオードアレイ検出器(PDA検出器)による多波長同時測定(190-900nm)を組み合わせて不斉収率を決定しています。両エナンオマーは測定波長によって不斉収率が変化しないことから、 PDAを使用すれば不純物のピークと見間違えることはありません。HPLC のオートサンプラー機能を使って終夜測定を行い、全てのキラルカラムと可能性のある溶媒比率を検討すれば、両エナンチオマーの分離条件を自動で見つけることができ、極めて効率的です。 また、耐溶剤型のキラルカラムでは様々な溶媒が使えるので、一般的な移動相溶媒(ヘキサン/アルコール)に溶けにくいサンプルでも安心して測定することができます。ダイセルのキラルカラムは非常に分離が良いので、スムーズに光学活性化合物の不斉収率を測定することが可能で、 研究に大変役立っています。ただ、極性がなくUV吸収の小さい化合物、例えば炭化水素だけでできた化合物の分離は難しいので、キラルGCによるFID検出に頼っている現状でありますが、この点が解決されるとうれしいですね。
キラルカラムに関してダイセルに
期待している点など
ございますでしょうか?
酸性、塩基性に関係なく、どんな化合物でも万能に分離できるキラルカラムを開発して欲しいです。具体的には、カルボン酸やアルコール、およびアミンなどのプロトン性水素を有する化合物を、それらの官能基を保護せずともシャープなピークで分離するキラルカラムが欲しいですね。 カタログにはトリフルオロ酢酸やジエチルアミンの添加が効果的であるとの説明がありますが、手間な割に、うまく分かれた経験が少ないため、最近では労を惜しまず保護してから測定しています。また、添加剤を加える場合、予め添加剤を含んだ移動相溶媒を調製し、 測定後、添加剤を含まない溶媒に交換してキラルカラムを洗浄するのですが、手間と時間がかかります。ICReDDでは他の研究グループとHPLCを共有しているので、キラルカラムの品質を維持するため使用後の洗浄は神経質にならざるを得ません。こういう状況を一新できる「万能キラルカラム」を開発して頂けたらと思います。