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[Vol.062 2022年8⽉号]
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キラルカラムでよくない?
(ライフサイエンス研究開発センター長 大西 敦)

異性体分離にもいろいろありますが、私はこれまでに、割と難易度が高いと言われている鏡像異性体(エナンチオマー)分離、すなわち“キラル分離”を手掛けて、多くのキラル分離を成功させてきました。そんな話を、懇意にしている徳島大学大学院 社会産業理工学研究部の小笠原正道教授にしたところ、「いやいやキラル分離できても、簡単には分離できない位置(Regio-)異性体やE/Z-異性体って結構ありますよ、全部分けなきゃダメですよ」と叱られました。

という訳で、様々な異性体種を含む反応混合物をキラルカラム1本で一度に分析できましたよ、という小笠原先生の論文をご紹介します。

Application of Polysaccharide-Based Chiral High-Performance Liquid Chromatography Columns for the Separation of Regio-, E/Z-, and Enantio–Isomeric Mixtures of Allylic Compounds, Ohji, Takehito, Ohnishi, Atsushi, Masamichi Ogasawara, ACS Omega 2022, 7, 6, 5146–5153.

先生が取り上げた反応は均一系金属触媒反応の代表と言ってもいい“π-アリルパラジウムによる求核的アリル置換反応(辻-トロスト反応)” です。この反応では反応基質/求核剤の組み合わせによっては、上記E/Z-異性体、およびキラルなRegio-異性体の両エナンチオマーといろんなパターンの異性体が同時に生成する場合があります。式(1)に示す通り、選択性を制御できないとLinearに置換したE/Z-異性体と、Branchに置換したラセミ体の両鏡像異性体の計4種が混ざって得られます。

式(1)
式(1)

さて実際に先生が行った反応ですが、式(1)に示す通り、求核剤にアセトアミドマロン酸エステルを用いたπ-アリルパラジウムへの求核置換反応で、(E)-L1、(Z)-L2、rac-B2((S)-and (R)-B2)の計4種の異性体が生成します。それらの実際のHPLC分析クロマトグラムを見ますと、(1) シリカゲルカラムでは肩のある1本ピークしか見られませんでした《話にならんわ》。(2) "CHIRALPAK® IA”カラムは部分的ですがキラル分離していますがE/Z-異性体分離は全く出来ていない、ということで、いやいや、仰る通りです。確かにエナンチオマー分離が一番難しい訳ではないことが納得できました《そうか、そうなんや》。(3) そこで ”IC” カラム、(このカラム結構、評判が良いのですが)を使うと、きれいにエナンチオマー分離とE/Z-異性体分離がなされて、4つのピークを認めることができました《しめしめ大成功》。

早い話が、Regio-異性体、E/Z-異性体は普通のシリカカラムで分析して、エナンチオマー分離はキラルカラムで分析、というのは「面倒くさい、もうやめた」 キラルカラム1本で済ませよう、"キラルカラムで、よくない?” ということなのです。

図(1)
図(1)

じゃあ、“IA”とか“IC”とかいっぱいあるけど、どんなカラムがいいのか、さっぱりわからん、と、お困りの皆様には、弊社が無償でご提供する“依頼分析サービス”をお勧めする次第です(バックナンバー2022年2月号のメルマガ(キラきら情報通信)に詳しく載っていますので、どうかご参照ください)。ちなみに小笠原先生はキラルカラムに精通されておられるので、さくさくとご自分でカラム・条件を見つけられますけどね。

若かりしころの小笠原先生と筆者

若かりしころの小笠原先生と筆者(約30年前) 
その頃からお付き合いがありました。

3度目の卒業!!
(ヘルスケアSBU 林 素子)

日本では卒業と言えば3月ですが、私は今回、欧米中の如く7月末でライフサイエンス事業企画室CPIカンパニーを卒業しました。

実は私はCPIカンパニーを卒業するのは3回目です。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、CPIカンパニーのCPIというのは、Chiral Pharmaceutical Ingredientsの略で、かつてはカラムによる光学分割、有機合成、バイオコンバージョンという3つの技術を柱として主に医薬品用の光学活性化合物を供給する事業を行っており、私はバイオコンバージョンによる化合物合成を検討するグループに所属していました。

【1回目@筑波研究所】

1回目は新入社員として研修終了後に配属となり、まずはCPIとは何の略かというところから覚えました。学生実験でしか微生物の培養をしたことがなく、遺伝子組換えも知識としてしか知らなかった私ですが、上司・先輩に恵まれ、仕事をするのが楽しい毎日でした。長く学生生活をしていた私には社会人になって毎月収入があることも嬉しく、体力に任せて趣味や旅行にもエネルギーを注いでいました。しかし改組があり、若さに任せて楽しく過ごしていた1回目のCPIカンパニーは卒業となりました。

【2回目@新井工場】

そして異動により、再びCPIカンパニー所属となりました。所属こそ研究開発ではありましたが、バイオの技術担当として営業と一緒にお客様訪問をしたり、学会のブースに立ったりする機会をたくさんいただきました。(あまり信じてもらえないのですが)それまでの私はあがり症で知らない人と話すことに苦手意識がありましたが、ここで鍛えてもらったおかげである程度克服できたと思っていますし、社会人としてやっていけるかも・・・と思えるようになった時期でもありました。しかし、組織変更によって再びCPIカンパニー卒業となったのでした。

【3回目@イノベーション・パーク】

この時の組織変更ではバイオのグループはCPIカンパニーから外れたため、流石に3回目はないかと思っていましたが、そのまさかがあったのです。キラきら情報通信@ダイセル4月号でお知らせの通り、CPIカンパニーが新組織としてスタートし、私は三度CPIカンパニーに所属することになりました。CPIカンパニーのカラムによる光学分割事業は、見知ったメンバーが殆どだったこともあり、「3回目のCPIカンパニー所属の林です」と自己紹介をしては「知ってるわ!」「3回目・・・?」と突っ込まれていました。

ただ、発足した新組織はライフサイエンスというキーワードの下に再編成されたため、それまで縁のなかった技術や人とも同じ組織となり、組織の運営なども手探りで始まったところでした。そして、私はバイオを離れて製剤のグループにいたため、知らないことばかりの中でやることも多く、毎日いっぱいいっぱいでした。そんな中、突然3度目のCPIカンパニー卒業を言い渡されたのです。青天の霹靂でした。

3度目のCPIカンパニーは4か月という短期留学だったため、楽しかった1回目、少し自信を持てた2回目と比較して、まだこういう時期だったと言えるものが見付かっていません。COVID-19禍の中、新組織でご縁ができた人とも直接会えず、オンライン会議で声だけのお付き合いでしたし、お客様ともお目にかかる機会がありませんでした。ただ、CPIカンパニーは私にとっては縁の深い組織です。このつながりを大事にしたいですし、所属はせずともきっと何か一緒にできると思っています(もしかしたら4回目の入学があるかもしれないと思わないこともありません)。

そして、キラきら情報通信@ダイセル読者の皆さまともお仕事でご一緒できることを、直接お目にかかれることを楽しみにしています。

林 素子・拝

著者近影
著者近影

東京生活スタート
(事業推進部 みのだ)

23年におよぶ新潟(妙高市)での暮らしに別れを告げて、この4月から東京での単身赴任生活を始めました。

現在、葛飾区に住んでおります。都会暮らしにも少しずつ慣れてきまして、休日は自転車に乗ってよくウロウロしております。(遠出のためのクロスバイクと、買い物用のママチャリの2台を使い分けしています。)

新潟生活が長かったせいか…、見るもの聞くものが全て新鮮。昭和世代の私にとって、まずは寅さんで有名な柴又帝釈天へということで、赴任後すぐにここを訪れて写真をパチリ。

買い物でこれまたよく訪れるJR亀有駅の前の広場でも両津勘吉像の写真をパチリ。葛飾区周辺は起伏の少ない土地なので、自転車があれば何処へでも行くことができてとても便利です。屋外なのでコロナ感染の心配も少なく気分転換にはもってこい。

皆さまにも是非"チャリダー"へのお仲間入りをオススメいたします!

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